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NOAH's Column


ノアコラム・・『品の良し悪しは、口元で決まる?』

「あなたは上品ですか?それとも下品ですか?」。ドキッとする質問です。実は見た目でその人の「品性」の印象を 大きく左右している場所があるのをご存知でしょうか?それは口なのです。漢字自体が「口」を三つ書いて「品」となります。

今も昔も「目鼻立ちが良い」というのは知性を表す表現として用いられますが、目が綺麗で鼻筋がとおっていても、口元がだらしないと 「あの娘は利発そうなんだけど品がないね~」となるわけです。だから芸能人はこぞって口元を綺麗にするわけです。 画面の向こうから伝わってくるのは、そのひとの真実よりも印象だからでしょう。

何故そうなのかということを歯科医的視点から考察しますと、口内は体の中で細菌の質、量、共にワースト一位でして、 細菌学的には体中で最も汚い場所であると言えます。家で例えるならば、トイレというところでしょうか。 いろんなお店に出かけて、そのお店をチェックする時にトイレの綺麗さをポイントにしている方は多いと思います。 「一番汚れるところをどうするか?」。家も体も同じで、そこに対する考え方にその方の品性が表れるのかもしれません。

同じ褒めていただくならば、「目鼻立ちが良い」より「明眸皓歯」と言われたいのは私だけでしょうか。

ノアコラム・・『伝染るんです。』

古代から人類が悩まされ続けている口の病気「虫歯」と「歯周病」。実はこれらは口に棲みついている細菌によって引き起こされているということをご存知でしたか? 口の中には多種多様な細菌が生息しており、この細菌が寄り集まって集落を形成してしまうことが問題となります。 細菌も人間と同じで数が増えすぎると周囲の環境に悪影響を及ぼしてしまうのです。 この細菌の集落のことを英語で「プラーク」、日本語で「歯垢(しこう)」と言います

実は、歯磨きで最も大事なことは、この「プラーク(歯垢)」を壊していくことなのです。 一日に一回、口の隅から隅まで「プラーク(歯垢)」を壊すことができさえすれば、「虫歯」や「歯周病」とは無縁の人生をおくることが可能になります。 そうは言ったものの、自分の口の中は自分で見ることはできません。 そこで、我々のような口の専門家が「プラーク(歯垢)」の付着しやすい場所やその壊し方をアドバイスさせていただくことで、 口の隅々まで「プラーク(歯垢)」を壊すことが可能になるのです

「プラーク(歯垢)」の大きな特徴は、人それぞれ顔形がちがうように、人によって細菌の種類や活動性が異なることです。 本来は、人により異なるはずの「プラーク(歯垢)」ですが、夫婦、親子、恋人同士などでは、だんだんと似てくることが判っています。 だから、「結婚する前は何ともなかったのに、結婚してから口の状態が悪くなった気がする」なんてことも・・・。

そうです、「プラーク(歯垢)」は伝染るんです。自分自身の為に、大切な方の為に適切な「歯磨き=プラークコントロール」を身につけてみませんか?

ノアコラム・・『かみあわせ』

今回は「かみあわせ」について述べてみたいと思います。 「咬み合わせ」は、上の歯と下の歯が接触する時の関係性のことですが、皆さんの「咬み合わせ」はいかがですか? 「咬み合わせ」は、良かったらあまり気になりませんし、悪いとすごく気になります。 もちろん、悪くても気付いていない方も中にはいらっしゃいますが…。

私のこれまでの経験では、「咬み合わせ」が悪いと、咬みにくいのはもちろん、局所的には歯が欠けたり、折れたり、 虫歯になったり、詰め物や被せ物が外れやすかったりします。また、歯周病が進行したりしますし、全身的には顔の表情が偏り、 頭痛がしやすく、疲れやすく、運動機能が低下することもあるようです。

では、「咬み合わせ」を良くするためにはどうしたらよいのでしょう? 一言でいうと「関係性に注目する」ということではないかと思います。 お口の中で何かトラブルが起きた時に、その箇所だけを見るのではなく、その箇所と上下左右、 それから反対側との関係性を評価し、因果関係を見極めた上で、全体のバランスを考慮しながら適切に処置することが大事だと 思います。

私の専門は「義歯(入れ歯)」ですが、この分野では、特に「咬み合わせ」の良し悪しの影響が大きくなります。 「義歯(入れ歯)」の状態が、良ければ「ニコニコ」何でも咬めるし、悪ければ「プンプン」痛くて咬めない、はめるのも嫌になります。 「咬み合わせ」の調整は、微妙な作業ですが、クライアント(患者様)との共同作業で、 何のストレスもない「神合わせ」となる瞬間を目指す時間と空間が私は大好きです。

ノアコラム・・『口凝り (くちこり』

「肩凝りならわかるけど口凝り?」な〜んて声が聞こえてきそうですが、実は、かなりの頻度で皆さん、お口が凝っておられます。 当たり前のことですが、顎の骨は顎の周囲の筋肉で動かされています。笑ったり、食べたり、あくびしたり…全て、この筋肉が顎を動かしてくれるからできることです。 この顎を動かす筋肉たちは、使い方に偏りがあったり、使いっぱなしにしていると凝り固まってしまいます。 その結果、顎の関節に負担をかけ顎関節症のきっかけになったり、頭痛を引き起こしたり、自分で自分の歯にダメージを与えてしまいます。

大リーガーのイチロー選手をはじめ、トップアスリートと呼ばれる人々は、入念な準備体操と競技終了後の整理体操を欠かしません。 常に100%の力を発揮するために、筋肉をベストの状態に保つ必要があるからですが、筋肉のマッサージやストレッチは、皆さんのお口のケアにおいても必要なことなのです。

普段、あまり意識はしていらっしゃらないと思いますが、咬むことも笑うことも立派な運動です。 きちんと咬み、素敵に笑うためには、顎の関節が滑らかに動き、顎の周囲の筋肉が自由自在に伸び縮みしてくれることが必要です。 ですから、ノアデンタルオフィスでは、クライアントの皆様に顎の筋肉のマッサージとストレッチをお伝えしております。 顎の関節と筋肉の状態が「咬み合わせ」、つまり治療の結果にすごく影響してくるので、お口があまり開かなかったり、食事をした後、顎がだるかったり、 口を開け閉めすると顎から音が鳴ったり、大口を開けるときに下顎が左右にずれながら開いたりする方にはお願いしてでもマッサージとストレッチをして頂きます。

「どんなストレッチをするの?」かって。一日に数回〜数十回お口を限界まで開けることです。 ただ、お口が凝っている方はマッサージをして、よ〜く筋肉をほぐしてからでないと・・・ 「開いた口がふさがらない」(-□-;)なんて、本当に笑えない状況になりかねませんからくれぐれもご注意を

ノアコラム・・『和願施 (わげんせ』

「スマイル0円」。某ファーストフード大手企業が、笑顔(^0^)でのおもてなしをうたったキャッチコピーです。 確かに笑顔で応対することにお金はかかりませんが、そのことが生み出す価値は計り知れません。 600を超える企業で、笑顔研修を行ったところ、売り上げが半年で2.5倍に急増したり、クレームが3分の1に減少するなど、驚くべき成果が上がっているところが多いそうです。 笑顔が、いかに対人関係をスムーズにして、良い結果を生むかということを物語るデータといえるでしょう。

では、素敵な笑顔とは、どんなものでしょうか?少し前に韓流ブームで、日本人女性のハートを鷲づかみにした「ヨン様」ことぺ・ヨンジュン。彼のこぼれるような笑顔は まさに理想形なのです。口角(唇の端)が上がり、整然と並んだ白く、光沢のある上の歯が10本以上見えています。 更に、歯科的に検証すると、笑った時の下唇の形態と上顎の歯並びが相似形になっていることも重要なポイントです。笑顔に影響力を持つのは①口②眉③目元の順番になっています。 口角をしっかりと上げ、上の歯を出来るだけ見せることが、素敵な笑顔をつくるコツです。ただ、ここで問題があります。歯にコンプレックスを抱いていると、 無意識に口角が上がることを妨げる指令が脳から発せられるようなのです。ですから、そんな人は、顔全体や雰囲気は笑おうとしているのに、目元と口元が動いていない、 なんとも不自然な笑顔になってしまいます。素敵な笑顔になるためには、歯のコンプレックスを取り除くことが何より重要です。臨床的にも、歯が綺麗になると笑顔が素敵になり、 自分に自信がついてくるので、性格が明るくなる方がほとんどです。

幸せだから笑顔になるのではなく、笑顔になれば幸せになるのかもしれません。「100万ドルのスマイル」を「0円」で施す人が増えて、世界が平和になること、それが私の願いです。

ノアコラム・・『若返りの法則』

昨今、テレビや雑誌などで「アンチエイジング」という言葉を目にすることが増えています。いわゆる「若返り」ということですが、我々のオフィスにおいても日常的に体験する出来事です。

人間は誰しも必ず年をとり「老化」していくのが宿命です。しかし、この「老化」と逆の現象が起こったように見えることがあります。 このメカニズムに関して、私なりに考察すると、肉体的なこともさることながら、精神的な部分によるところが大きいように思えます。 つまり、「私は若い」という確信を持ち、かつ周囲の方々から「あなたは若い」と認知されている方は、実際の肉体年齢、細胞年齢、見た目、言動…など など、すべてにおいて実際の年齢より若々しく、まさしく「アンチエイジング」を体現しておられます。 そんな方々の精神的な共通点は、「自信」を持っているということです。「コンプレックス(劣等感)」を感じていないという言い方もできます。 そんな中、我々は口元のコンプレックスを解消するためのお手伝いをしております。 口元は体のほんの一部分ではありますが、コンプレックスの原因になっている方が、かなりいらっしゃいます。 しかし、そのことが「自信」を持つことを阻害しているということを自覚している方は、ごく少数なのが実情です。 「口元のコンプレックス」が解消されるだけで、皆さん若返ります。クライアントに治療前と治療後の顔写真を並べてお見せすると、その差は一目瞭然、 ご本人が一番驚かれます。

つまり、「アンチエイジング」とは、コンプレックスを原因とした様々なストレスに曝され、実際の年齢以上に老けて見えていた人が、 コンプレックスを解消することにより自信を取り戻し、実際の年齢より若い心と体に回復するというのが正味のところではないでしょうか。

これからも「生涯青春」を合言葉に、人生を楽しむための「アンチエイジング」を応援する歯科診療所でありたい思います。

ノアコラム・・『幸福の門』

突然ですが「門歯」ってご存知ですか?三省堂のデイリーコンサイス国語辞典によると、 「前面中央の上下4本ずつの歯」と表記されています。哺乳類にある歯のうち、中央にある前歯のことで、 食べ物などを噛み切る時に使用することから「切歯」とも呼ばれています。この「門歯」の色や形が気に入らず、コンプレックスの原因になる方も多いようです

歯科は医療には違いありませんが、芸術的な側面も持ち合わせており、例えば、「門歯」の微妙な色使いや形態のちょっとした違いで、 その人の印象を大きく変えることができます。それだけに古くから研究が積み重ねられていて、古代ギリシャ時代から追求された「黄金比率」と呼ばれる美的な比率や、 レオナルド・ダ・ビンチなどが考察した美しさの要素を加味して、歯並びや歯の形の基本的な考えが成立しています。例えば「上の前歯の向きの上下を逆さにすると、 顔の形の相似形である」とか、「上の前歯の大きさは顔の大きさの1/16〜1/17である」などということがそれにあたります。また、美しさの要素の中に、 周囲との調和というものがありますが、顔の形と歯の形の関係は、まさに「調和が命」であると思います。現在では、さらに考え方が進んで 「SPA要素(性別、性格、年齢)」を考慮して芸術性を追求し、こだわりを表現できるようになっています。

素敵な玄関のお家には「福」が舞い込みます。お口の「門(歯)」構えを美しく整えていただき、「幸」多き人生を歩んでいただくことが、私の喜びの一つであることは言うまでもありません。

ノアコラム・・『「入れ歯安定剤」よ、さようなら』

「総義歯(総入れ歯)」というと、どんな印象をお持ちになりますか?「噛めない」「顔がおかしくなる」「痛い」「不便」 「違和感がある」など、お困りの方やそのご家族は、数えあげれば、きりがないくらいマイナスなイメージを持って らっしゃると思います。数ある臨床項目の中でも「総義歯」治療は、私にとって最も興味のある分野の一つですが、 患者様と一緒になって「総義歯」を製作していく過程が大好きな理由は、以下の通りです。

  • ①自由度が高く、芸術的とも言える美しさが付与できること。
  • ②患者様が食事を満足にできるようになることで、笑顔に自信を持ち、性格も明るくなるプロセスを共有できること。
  • ③歯を失った人にしかわからない、歯の有り難さを実感していただくとともに、心から喜んでいただけること。
  • ④痛みを伴う処置をほとんど施さなくて良いこと。
  • ⑤生来の職人気質が存分に発揮できること。

ちなみに私の「総義歯」に対する印象は、「なんでも噛める」「若返る」「清潔」「自然」など、ほとんどがプラスのイメージでして、 そんな風に思えるのは、「総義歯」を製作させて頂いた皆様の様子や感想のおかげです(笑)。 現在、テレビCMでもおなじみの「入れ歯安定剤」の市場は1000億円を超えるといわれていますが、義歯はきち んと製作すれば、よほど条件の悪い場合を除き、「入れ歯安定剤」は必要ありません。使えば使うほど歯ぐきの形が 悪くなり、さらに不便な状況になる「入れ歯安定剤」を使わざるをえない方々がいまだ数多くいらっしゃることに、本 当に心を痛めています。これからもお一人お一人の患者様と義歯作りを楽しみながら、お口の中から「入れ歯安 定剤」を永久追放していこうと考えています。

ノアコラム

見えない部分だからと言って、抜けた歯をそのままにしていたり、痛くないからと言って脱離した冠や詰め物をそのままにしていませんか?

お口の中は、絶妙なバランスで成り立っており、歯が抜けたりして、本来、隙間のあるはずのないところにスペースが出来ると、その隙間を埋 めようとする作用が働き始めます。例えば、上の歯が一本抜けると、その歯と向かい合う関係にある下の歯が伸びてきますし、抜けた歯の後方 に歯がある場合は、その歯が前方に倒れてきます。このような状況になってしまうと大抵の場合、かみ合わせのバランスが崩れます。「蟻の 一穴」(小さな蟻が掘ったような穴でも、そのままにしておくと堤防が決壊することがあるので馬鹿に出来ないという意味)ということわざに もあるように、お口の中もちょっとした狂いを放置していると、後で取り返しのつかない結果を招き、それを修正する為に多大な犠牲を払うこ とになってしまいます。

咬み合わせが狂うとお口の中の問題にとどまらず、頸椎や脊椎がズレやすくなって、肩こりや腰痛の原因になりかねま せん。何より、大好きなお食事が満足に召し上がれなくなったり、どうかするとお顔の形が変わってきたりしますから、本当にその被害たるや 甚大です。

 

当院では、最初の診査の時に患者様毎にお口の中の石膏模型を作製し、手にとってご覧になって頂きます。ご自身のお口の中を見るのは、 初めての方がほとんどなので、目を丸くしてご自分の歯型をご覧になる様子は大変微笑ましく、それだけで診査をお受け頂いて良かったと思い ます。  多くの災いは自分の現状を知らないことから起こります。一生お付き合いするお口の中のバランスに、ほんの少し興味と関心をもっていただ けると嬉しく思います。

ノアコラム・・『おくちのにほひ』

かへり来ぬむかしを今とおもひ寝の夢の枕に匂ふたちばな 式子内親王

新古今和歌集のなかの歌です。意味は「二度と戻れない昔の事を、まるで今の事のように思い出している夢の枕元に、 昔の恋人が衣服に焚きつけていた橘の匂いがした」というようなかんじでしょうか。 昔の恋人との甘美で切ない過ぎ去った恋を「匂い」という感覚を通して脳裏に思い浮かべ、感慨にふけっているのでしょう。 なんとも日本らしい情緒あふれる歌だと思いませんか? そんな素晴らしい「匂い」という漢字が、同じ読みでも「臭い」という漢字になると、少々、趣が変わってまいります。

 

「おじいちゃん、お口くさ~~い!」入れ歯洗浄剤のCMのキャッチコピーですが、耳にした事がある方も多いのではないでしょうか? かわいい孫娘からの歯に衣着せぬきつい一言です。気にしてらっしゃる方も多いと思いますが、なんせ、自分では嗅ぐことが難しいのが「お口の臭い」。 その原因の85%は、お口の中の細菌や細菌が産生したものなのです。虫歯や歯周病は細菌が原因ですし、義歯が臭うのも細菌の仕業です。 つまり、きちんとした治療や予防を行い、細菌の質と量をコントロール出来さえすれば、お口の中の「病気」とも「臭い」ともさよなら出来るのです。

 

大切な人との想い出が、「臭い」ではなく「匂い」として刻まれるように、我々がお役に立てれば、「いとうれし」でございます。

 

先日、訃報が届きました。

大分市にお住まいの辻塚雅行氏、私のオフィスで初めて総義歯を製作させていただいた方です。その報せを耳にした瞬間、何ともいえぬ脱力感に襲われました。辻塚氏は、お酒と芸術をこよなく愛し、絵の方は個展を開催するほどの実力の持ち主でした。

思い起こせば7年前、オフィスを開業してすぐに、奥様とお二人でお越しになり、義歯の製作を依頼されました。それまでは、少々お口の中の状態が悪くても歯医者にかかることもなく、だんだんと歯が抜け落ちていかれたようで、当時は御自分の歯がほんの数本残ってらっしゃる程度でした。故に、食事もままならぬ状態で、自然と酒量が増え、人とお会いになるのも億劫になっていらっしゃいました。

約半年後、義歯が完成し、辻塚氏のお顔は自信に充ち溢れ、食事が満足にとれるようになり、お酒の量は減りました。

「自分の臓器になりましたよ、まるで血がかよっているようだ、時々、昔の癖で爪楊枝をつかってしまう(笑)」と仰っていただいたのがとても印象にのこっています。

それからの7年間、来院されたのは2回だけ。半年に一回のメンテナンスを度々お勧めするものの、「歯は調子が良いから大丈夫。今度、顔を出しますから~」と明るい電話口の声に、困ったような、喜んでいいような、複雑な心境でした。

 

この度、家内と二人で御焼香に伺い、奥様にお話を伺ったところ、「歯を作っていただいてからの7年間は、主人は本当に幸せそうでした。毎日の食事を楽しみ、お酒を飲んで、友人達を家に連れ込んでは話に花を咲かせていました。本当に有難うございました。」とのお言葉をいただき、ぽっかりと穴のあいたような感覚が癒される感じがいたしました。

部屋の中は、お二人が仲睦まじく暮らしてらっしゃった空気が満ちており、それまでの楽しかった想い出を明るくお話してくださった奥様のご配慮もあって、穏やかな気分で、お宅を後にした次第です。

 

自分達のしている仕事の意味と価値をあらためて教えていただいたような気がしています。この場をお借りして、辻塚氏のご冥福を心よりお祈りいたします。  合掌。

患者様:

「入れ歯って、作ってから少しすると緩くなるよなぁ。」

私 :

「えっ!そんなことありませんよ。うちで作った入れ歯は使えば使うほど、馴染んできて歯ぐきにくっつくようになります。」

患者様:

「ほんとかえ、そんなん聞いたことないえ。年をとると歯ぐきが減って、小さくなるんやろ。」

私 :

「いいえ、そんな事はありません。入れ歯の形にそった、歯ぐきの形になっていくから、何年たっても歯ぐきの形はほとんど変わりません。」

患者様:

「へぇ~、そんな事あるんかえ。」


私共の診療所でよく交わされる会話です。

私共の入れ歯作りは、少し普通と違いまして、歯ぐきの形を型取りする前に、徹底的に歯ぐきを鍛えあげます。具体的にどういう風にするかと申しますと、仮の入れ歯をまずはお作りして、日常生活でどんどん使っていただきながら、痛い所やくっつき具合を調整していきます。仮の入れ歯で、十分に何でも咬めて、歯ぐきがカチカチに固まってきたら、待ちに待った最終的な入れ歯の型取りの時期到来です。

お陰様で、当診療所も8年目を迎える事が出来ましたが、未だに入れ歯の作り替え0件、入れ歯が嫌でインプラントを希望された方0人です。咬め過ぎて、固い陶器の歯が少しずつ擦り減りますので、半年に一回のかみ合わせの調整にはお出でいただく必要がありますが…。

入れ歯は、とても体にやさしい治療法だと思います。そんな入れ歯作りと、入れ歯をお使いの方の満足気なお顔を拝見するのが私の楽しみの一つです。

私 :

「○○さん、次回、いよいよ新しい入れ歯ができますよ」

患者様:

「おっ、いよいよやなぁ。嬉しいなぁ♪ところで、これまでに使ってきた仮の入れ歯はどうするん?結構何でも咬めるし、慣れてて、愛着があるんやけど…」

私 :

「ご心配なく。仮の入れ歯も活かしますから」

患者様:

「どうやって?」

私 :

「治療中に用いていた調整材をきちんと張替えて、予備の入れ歯としてお渡しします」

患者様:

「じゃあ、もし新しい入れ歯が壊れたり、失くしたりした時に使えるんかぇ」

私 :

「そうです。このシステム、結構、皆さんに喜んでいただいてるんですよ」

患者様:

「はははっ、二組も入れ歯が出来るなんて、なんか得した気分♪」


通常、歯科業界の常識で言えば、一つのお口に二つの入れ歯をお作りして、どちらの入れ歯も使用できることは、まずありえません。

しかし、仮の入れ歯を用いて十分に調整した後、そこで得られた情報を活かして最終的な入れ歯を作る当診療所のシステムと、超一流の技工所「ワイズセラミック」の技術力をもってすると、不可能が可能になるのです。

実は当初、私自身が、二つの入れ歯のあまりの互換性の高さに、自分の目を疑った程です。それは正に、双子の入れ歯です。

入れ歯は、その特性上、お口に入れたり出したりする為、紛失や破損の危険性に常にさらされています。また4~5年使用して、ちょっとした調整や修理の必要性が出てきた時に、予備の入れ歯があれば、お使いの入れ歯を数日お預かりできるので、御迷惑をおかけすることもありませんし、必要な時にキッチリと修理やメンテナンスが出来ます。

入れ歯は「物」であり、「人工臓器」でもあります。使用感が良ければ良いで、無くなった時の不都合は大きなものです。双子の入れ歯があれば、貴重な情報が残っているので、再製作がしやすいというメリットもあります。